日本英文学会関東支部メールマガジン 臨時号 2025年5月28日
2025/05/28 (Wed) 09:00
日本英文学会関東支部メールマガジン
臨時号 2025年5月28日
田尻芳樹先生(東京大学)よりお知らせです。
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日本カズオ・イシグロ研究会第1回例会
2024年11月8日、カズオ・イシグロの古希の誕生日に長崎の旧イシグロ邸にて日本カズ
オ・イシグロ研究会を発足いたしました。現在、会員を募集しております(会費無料)。
第一回例会を以下の要領で行いますのでお気軽にご参加ください。プログラムは今年9月
に公開される映画『遠い山なみの光』を踏まえたものとなっております。
日時:2025年6月22日(日)14:00-17:00
場所:東大駒場キャンパス 18号館 1階メディアラボ2(ハイブリッド開催)
事前登録は対面、オンライン共に6月15日までに下記研究会ホームページの参加フォームからお願いします。
https://sites.google.com/view/kazuo-ishiguro-research-circle/events?authuser=0
研究会に入会をご希望の方は同ホームページ
Kazuo Ishiguro Research Circle of Japan
の会員登録フォームからどうぞ。
日曜日は会場となる18号館の正面入り口は通常閉まっておりますため、14時少し前にスタッフが開ける予定です。来場時にはタイミングにお気をつけください。14時より遅れていらっしゃる場合には、大変お手数ですが、あらかじめ事務局( k.ishiguro.soc.jp@gmail.com)までご連絡ください。
スケジュール:
14:00-14:10 開会の辞 代表幹事 田尻芳樹(東京大学教授)
14:10-14:50 【研究発表】肖軼群(しょういつぐん)(京都大学大学院博士課程) 司会 三村尚央(千葉工業大学教授)
「囚われの親──カズオ・イシグロ作品における『抗う子供』」
15:00-16:00 【講演会】菅野素子(鶴見大学教授)司会 荘中孝之(京都女子大学教授)
「やがて来る映画に向けて──カズオ・イシグロ『遠い山なみの光』のアダプテーションについて」
16:10-16:40 【トーク】田尻芳樹「『遠い山なみの光』についてのトリビア――lanternの意味を探る 」
16:40-17:00 【オープンディスカッション】 進行 加藤めぐみ(都留文科大学教授)「会員の皆様からの声をきく」
発表要旨
【研究発表】 肖軼群(しょういつぐん)(京都大学大学院博士課程)
「囚われの親──カズオ・イシグロ作品における『抗う子供』」
本稿では、カズオ・イシグロの処女作『遠い山なみの光』を中心として、イシグロの長
編小説における子供の描かれ方の変化を考察し、抑圧的な環境に抗い続ける子供という共
通の表象を明らかにする。そのためにまず、『遠い山なみの光』に登場するマリコの一見
不可解な言動を紐解き、大人の支配に抗いながら、母親を自らの過ちから救出しようとす
る彼女の人物像を明確にする。次に、この「抗う子供」の物語が『充たされざる者』や
『忘れられた巨人』で翻案され、そしてイシグロ作品における子供像の確立の土台になっ
ていることを論じる。最終的に、本稿は『遠い山なみの光』からのイシグロ作品で描かれ
続ける、無力な子供が親を救出する幻想をするが、その幻想が必然的に破滅に向かう物語
を明らかにし、異色な存在である子供の表象のイシグロの大テーマである「自己欺瞞」と
の共鳴作用を指摘する。
【講演会】 菅野素子(鶴見大学教授)
「やがて来る映画に向けて──カズオ・イシグロ『遠い山なみの光』のアダプテーション
について」
本発表では、米国テキサス大学ハリー・ランサム・センターが所蔵する「カズオ・イシ
グロ・ペーパーズ」に収められている『遠い山なみの光』(A Pale View of Hills, 1982
年)の映画脚本を取り上げて、これまでにどのような映画化(アダプテーション)案が
あったのかを紹介します。同センターのアーカイブ資料によると、1980年代には英国の映
像作家ピーター・コズミンスキーが、1990年代には日本の吉田喜重が、そして2000年代に
はふたたびコズミンスキーがカナダの映画プロデューサーと組んで映画化を進めていまし
た。映画アダプテーションがなかなか日の目を見ない中、2005年8月にはラジオ・ドラマ
版がBBCラジオ4で放送されました。つまり、映画本編としては今年2025年9月に封切りと
なる石川慶監督の作品が初お目見えですが、その映画にはすでに原作小説の他にもアダプ
テーションの先行テクストが存在する、とも言えます。
「どれひとつとして、映画になっていない」――2014年、アーカイブ資料に添えた黄色
い付箋メモにイシグロは記しました。どの脚本案にもかなり積極的に関わっていたイシグ
ロが晴れの日を迎えるのは、もうすぐです。
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臨時号 2025年5月28日
田尻芳樹先生(東京大学)よりお知らせです。
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日本カズオ・イシグロ研究会第1回例会
2024年11月8日、カズオ・イシグロの古希の誕生日に長崎の旧イシグロ邸にて日本カズ
オ・イシグロ研究会を発足いたしました。現在、会員を募集しております(会費無料)。
第一回例会を以下の要領で行いますのでお気軽にご参加ください。プログラムは今年9月
に公開される映画『遠い山なみの光』を踏まえたものとなっております。
日時:2025年6月22日(日)14:00-17:00
場所:東大駒場キャンパス 18号館 1階メディアラボ2(ハイブリッド開催)
事前登録は対面、オンライン共に6月15日までに下記研究会ホームページの参加フォームからお願いします。
https://sites.google.com/view/kazuo-ishiguro-research-circle/events?authuser=0
研究会に入会をご希望の方は同ホームページ
Kazuo Ishiguro Research Circle of Japan
の会員登録フォームからどうぞ。
日曜日は会場となる18号館の正面入り口は通常閉まっておりますため、14時少し前にスタッフが開ける予定です。来場時にはタイミングにお気をつけください。14時より遅れていらっしゃる場合には、大変お手数ですが、あらかじめ事務局( k.ishiguro.soc.jp@gmail.com)までご連絡ください。
スケジュール:
14:00-14:10 開会の辞 代表幹事 田尻芳樹(東京大学教授)
14:10-14:50 【研究発表】肖軼群(しょういつぐん)(京都大学大学院博士課程) 司会 三村尚央(千葉工業大学教授)
「囚われの親──カズオ・イシグロ作品における『抗う子供』」
15:00-16:00 【講演会】菅野素子(鶴見大学教授)司会 荘中孝之(京都女子大学教授)
「やがて来る映画に向けて──カズオ・イシグロ『遠い山なみの光』のアダプテーションについて」
16:10-16:40 【トーク】田尻芳樹「『遠い山なみの光』についてのトリビア――lanternの意味を探る 」
16:40-17:00 【オープンディスカッション】 進行 加藤めぐみ(都留文科大学教授)「会員の皆様からの声をきく」
発表要旨
【研究発表】 肖軼群(しょういつぐん)(京都大学大学院博士課程)
「囚われの親──カズオ・イシグロ作品における『抗う子供』」
本稿では、カズオ・イシグロの処女作『遠い山なみの光』を中心として、イシグロの長
編小説における子供の描かれ方の変化を考察し、抑圧的な環境に抗い続ける子供という共
通の表象を明らかにする。そのためにまず、『遠い山なみの光』に登場するマリコの一見
不可解な言動を紐解き、大人の支配に抗いながら、母親を自らの過ちから救出しようとす
る彼女の人物像を明確にする。次に、この「抗う子供」の物語が『充たされざる者』や
『忘れられた巨人』で翻案され、そしてイシグロ作品における子供像の確立の土台になっ
ていることを論じる。最終的に、本稿は『遠い山なみの光』からのイシグロ作品で描かれ
続ける、無力な子供が親を救出する幻想をするが、その幻想が必然的に破滅に向かう物語
を明らかにし、異色な存在である子供の表象のイシグロの大テーマである「自己欺瞞」と
の共鳴作用を指摘する。
【講演会】 菅野素子(鶴見大学教授)
「やがて来る映画に向けて──カズオ・イシグロ『遠い山なみの光』のアダプテーション
について」
本発表では、米国テキサス大学ハリー・ランサム・センターが所蔵する「カズオ・イシ
グロ・ペーパーズ」に収められている『遠い山なみの光』(A Pale View of Hills, 1982
年)の映画脚本を取り上げて、これまでにどのような映画化(アダプテーション)案が
あったのかを紹介します。同センターのアーカイブ資料によると、1980年代には英国の映
像作家ピーター・コズミンスキーが、1990年代には日本の吉田喜重が、そして2000年代に
はふたたびコズミンスキーがカナダの映画プロデューサーと組んで映画化を進めていまし
た。映画アダプテーションがなかなか日の目を見ない中、2005年8月にはラジオ・ドラマ
版がBBCラジオ4で放送されました。つまり、映画本編としては今年2025年9月に封切りと
なる石川慶監督の作品が初お目見えですが、その映画にはすでに原作小説の他にもアダプ
テーションの先行テクストが存在する、とも言えます。
「どれひとつとして、映画になっていない」――2014年、アーカイブ資料に添えた黄色
い付箋メモにイシグロは記しました。どの脚本案にもかなり積極的に関わっていたイシグ
ロが晴れの日を迎えるのは、もうすぐです。
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