日本英文学会関東支部メールマガジン 臨時号 2024年9月4日
2024/09/04 (Wed) 18:17
日本英文学会関東支部メールマガジン
臨時号 2024年9月4日
川端康雄先生(日本女子大学・名誉教授)よりお知らせです。
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ラスキン文庫創立40周年記念シンポジウム
「ヴィクトリア朝英国のユートピア/ディストピア」
【日時】2024年10月26日(土)14:00~16:30
【会場】慶應義塾大学三田キャンパス東館ホール(定員120名)
【登壇者および演題】
司会 富士川義之(ラスキン文庫理事、英文学)
講師 武藤浩史(英文学・文化研究)
サミュエル・バトラー『エレホン』の遊戯的想像力と長い19世紀
講師 川端康雄(ラスキン文庫評議員、英文学・文化研究)
リチャード・ジェフリーズ『ロンドンが滅んだあとで』のカタストロフィと「途方もない希望の波」(モリス)
講師 横山千晶(東京ラスキン協会員、英文学・文化研究)
教育・環境・コミュニティ――セント・ジョージ・ギルドという「予言」
ディスカッサント 草光俊雄(ラスキン文庫評議員、イギリス社会経済史・文化史)
【懇親パーティ】17:00~ 三田キャンパス内カフェテリア
対面開催のみでオンラインでの配信はありません。
参加費はシンポジウム、懇親パーティとも無料です
参加ご希望の方は以下のメールアドレスにて川端までご連絡ください(問い合わせ先も同様です)。
ykawabata [アットマーク]fc.jwu.ac.jp
【シンポジウム趣旨】
ラスキン文庫は英国19世紀の批評家ジョン・ラスキン(1819–1900)の研究者であった御木本隆三(1893–1971)のコレクションを基礎として1984年9月に開設された図書館(アーカイヴ)です。2024年は創立から40周年の節目となります。その記念行事のひとつとして、標記のシンポジウムを開催する運びとなりました。
英国のヴィクトリア朝期(1837–1901)は一般に繁栄の時代と見られています。国内では18世紀末以来世界に先駆けて工業化を進め、中流階級が力を増し、対外的には列強のなかで競争に勝ち抜きイギリス帝国としての繁栄を見た覇権国家の時代、と大まかにいうことができますが、国内だけを見ても、「二つの国民」(ディズレイリ)と称されるような富裕層と貧困層の二極化が生じ、また工業化に伴って住宅問題や環境問題が生じるなど、さまざまな社会矛盾が顕在化した時代でもありました。後者の点について警鐘を鳴らした人物のひとりが批評家ラスキンにほかなりません。
この時代に文学面では「ユートピア」を扱った作品が多く出ています。ラスキンに強い影響を受けたウィリアム・モリスの『ユートピアだより』(1890年)はその代表作と言えるでしょう。同時に「否定的ユートピア」、現代では「ディストピア」という語で理解されているような、理想郷とは正反対のネガティヴな世界を描き出した作品もこの時代に多く出ています。サミュエル・バトラーの『エレホン』(1872年)は、美しい住民たちからなる理想郷であるかのように見せながら、主人公の旅人がそこから逃げ出さずにはいられない世界を描いている点でディストピアの先駆的作品と言えます。リチャード・ジェフリーズの『ロンドンが滅んだあとで』(1885年)は邦訳がないため日本ではあまり知られていませんが、近代都市ロンドンが滅亡したあとの世界を描いていて20世紀後半に興隆する「ポストアポカリプス」SFを先取りするようなところがあります。ラスキンについては、セント・ジョージ・ギルドという新しい農村共同体づくりの試みが特筆されます。その理念と実践は今日の状況に照らしてどのように評価することができるのでしょうか。
本シンポジウムでは、「ユートピア」「ディストピア」をキーワードとして、上記の著述家の作品を中心的に取り上げ、ラスキンが「セント・ジョージのギルド」で試みたユートピア的共同体の理念と重ね合わせて報告・討論をおこないます。
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臨時号 2024年9月4日
川端康雄先生(日本女子大学・名誉教授)よりお知らせです。
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ラスキン文庫創立40周年記念シンポジウム
「ヴィクトリア朝英国のユートピア/ディストピア」
【日時】2024年10月26日(土)14:00~16:30
【会場】慶應義塾大学三田キャンパス東館ホール(定員120名)
【登壇者および演題】
司会 富士川義之(ラスキン文庫理事、英文学)
講師 武藤浩史(英文学・文化研究)
サミュエル・バトラー『エレホン』の遊戯的想像力と長い19世紀
講師 川端康雄(ラスキン文庫評議員、英文学・文化研究)
リチャード・ジェフリーズ『ロンドンが滅んだあとで』のカタストロフィと「途方もない希望の波」(モリス)
講師 横山千晶(東京ラスキン協会員、英文学・文化研究)
教育・環境・コミュニティ――セント・ジョージ・ギルドという「予言」
ディスカッサント 草光俊雄(ラスキン文庫評議員、イギリス社会経済史・文化史)
【懇親パーティ】17:00~ 三田キャンパス内カフェテリア
対面開催のみでオンラインでの配信はありません。
参加費はシンポジウム、懇親パーティとも無料です
参加ご希望の方は以下のメールアドレスにて川端までご連絡ください(問い合わせ先も同様です)。
ykawabata [アットマーク]fc.jwu.ac.jp
【シンポジウム趣旨】
ラスキン文庫は英国19世紀の批評家ジョン・ラスキン(1819–1900)の研究者であった御木本隆三(1893–1971)のコレクションを基礎として1984年9月に開設された図書館(アーカイヴ)です。2024年は創立から40周年の節目となります。その記念行事のひとつとして、標記のシンポジウムを開催する運びとなりました。
英国のヴィクトリア朝期(1837–1901)は一般に繁栄の時代と見られています。国内では18世紀末以来世界に先駆けて工業化を進め、中流階級が力を増し、対外的には列強のなかで競争に勝ち抜きイギリス帝国としての繁栄を見た覇権国家の時代、と大まかにいうことができますが、国内だけを見ても、「二つの国民」(ディズレイリ)と称されるような富裕層と貧困層の二極化が生じ、また工業化に伴って住宅問題や環境問題が生じるなど、さまざまな社会矛盾が顕在化した時代でもありました。後者の点について警鐘を鳴らした人物のひとりが批評家ラスキンにほかなりません。
この時代に文学面では「ユートピア」を扱った作品が多く出ています。ラスキンに強い影響を受けたウィリアム・モリスの『ユートピアだより』(1890年)はその代表作と言えるでしょう。同時に「否定的ユートピア」、現代では「ディストピア」という語で理解されているような、理想郷とは正反対のネガティヴな世界を描き出した作品もこの時代に多く出ています。サミュエル・バトラーの『エレホン』(1872年)は、美しい住民たちからなる理想郷であるかのように見せながら、主人公の旅人がそこから逃げ出さずにはいられない世界を描いている点でディストピアの先駆的作品と言えます。リチャード・ジェフリーズの『ロンドンが滅んだあとで』(1885年)は邦訳がないため日本ではあまり知られていませんが、近代都市ロンドンが滅亡したあとの世界を描いていて20世紀後半に興隆する「ポストアポカリプス」SFを先取りするようなところがあります。ラスキンについては、セント・ジョージ・ギルドという新しい農村共同体づくりの試みが特筆されます。その理念と実践は今日の状況に照らしてどのように評価することができるのでしょうか。
本シンポジウムでは、「ユートピア」「ディストピア」をキーワードとして、上記の著述家の作品を中心的に取り上げ、ラスキンが「セント・ジョージのギルド」で試みたユートピア的共同体の理念と重ね合わせて報告・討論をおこないます。
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